健診スケジュール説明

フォローアップの概要

フォローアップチームの構成

小児科あるいは新生児科医を中心に、小児(発達)神経科医 、臨床(発達)心理士、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、栄養士、眼科医、歯科医、メディカルソーシャルワーカー(MSW(※2))などで構成される。症例により、循環器専門医、小児外科医、耳鼻科医、整形外科医、脳外科、小児歯科医などとの連携体制をとる。

地域における連帯

  • 地域病院・小児科クリニック、療育センター、保健所・保健センター、訪問看護ステーションなどと連携。さらには教育関係者とも連携する。
  • フォローアップ担当者は、これら関係者のコーディネーターとしての役割も必要である。
  • 保健センターとの連携に関しては、退院時連絡票を送付する。
  • 在宅医療を実施する場合や家庭での児の養育に問題が生じるおそれがある場合には退院前に連絡し、保健師の病院訪問、家庭訪問依頼、関係者のカンファレンスなどを実施する。

総合周産期母子センターにおけるフォローアップ

  • 新生児医療へのup-to-dateの有効なフィードバックを行うためには、共同で大規模な予後データを集積して分析することが不可欠である。
  • 総合周産期母子センターにおいては、少なくともkey ageには共通のプロトコールによりハイリスク児のフォローアップを行い、アウトカムデータを集積し、現在の医療の客観的な評価を可能にする。
  • 総合周産期母子センターが中心となり、地域の医療施設、療育施設や保健、教育施設との連携体制を構築する。

フォローアップ健診の対象

  • 発育・発達に障害のリスクがあり継続的な観察・支援が必要な児。
    1. 早産低出生体重児(特に極低出生体重児)
    2. 慢性疾患(慢性肺疾患、短腸症候群などの外科疾患)
    3. 神経学的問題を合併した児(頭蓋内出血、脳室周囲白質軟化症、新生児痙攣、仮死など)
    4. 多胎
    5. 染色体異常など
    6. その他の特殊な問題を合併する児(代謝性疾患、TORCH(※3)症候群など)
  • Maltreatment(不適切な児の養育)のリスクがある場合。

フォローアップ健診の時期

  • 退院時以降、1歳6ヶ月まで:2~3ヶ月ごと
  • 1歳6ヶ月以降3歳まで:6ヶ月ごと
  • 3歳以降6歳まで:年1~2回
  • 就学後:小学3年生

ハイリスク児フォローアップ研究会のプロトコールによる健診

4つのKey age:1歳6ヶ月(修正月齢)、3歳(暦年齢)、6歳、小学3年。

ハイリスク児フォローアップ研究会のプロトコールと要点

プロトコール

対象

極低出生体重児

発達健診施行時期(key age)
  • 1歳6ヶ月(+2ヶ月)(修正月齢)
  • 3歳(+4ヶ月)(暦年齢)
  • 6歳(就学前健診)
  • 小学3年生
発達健診の様式
  • 参加施設は上記のkey ageには、共通のフォームを使用して発達健診を行う。
  • 共通の問診用紙、改訂版の健診用紙を使用する。
  • 発達遅滞、知能障害の診断は同一の検査法を用いて行う。
  • 1歳6ヶ月、3歳:新版K式発達検査
  • 6歳、小学3年生:WISC-IV
データの集計、処理
  • 各施設でのデータ入力用にはファイルメーカーProで作成したファイルを参加施設に提供する。
  • データ解析は各施設から提出されたファイルをもとに事務局で一括して集計、処理を行う。
  • 提出データは個人が特定されないものとする。

key age における発達健診の要点

どのkey ageにおいても、以下の項目について診察を行い評価する。

  1. 身体発育(体重、身長、頭囲、胸囲、腹囲)
  2. 家族構成、Maltreatment(abuse、neglectを含む)、集団保育・学校の状況
  3. 神経学的診察所見とその評価
    • 正常、脳性麻痺(CP)、軽度運動障害:3歳以下ではCP疑い
    • 運動発達遅延の有無(3歳以下)
    • 運動障害、視知覚認知障害のスクリーニング(6歳と小学3年)
  4. 合併症など
    • 痙攣性疾患の有無
    • 視覚障害の有無、聴覚障害の有無
    • 身体的合併症
  5. 神経学的検査(脳波、MRI、CTなど)の有無と結果
  6. 行動(正常、境界、多動、自閉傾向など)
  7. 精神発達
    • 発達・知能検査の評価

      正常:DQ(※4)またはIQ(※5) 85以上
      境界:DQまたはIQ 70~84
      遅滞:DQまたはIQ 70未満

    • 発達検査(新版K式発達検査)および、知能検査(WISC-IV)は原則的に臨床心理士などが行う。
    • 小児科医(新生児科医)以外の目から見た児の評価も重要である。
  8. 自宅や地域での療育、医療の必要性
  9. 児の特徴などについて自由記載

(※1)IUGR:intrauterine growth retardation(restriction) = 子宮内胎児発育遅延(制限)
(※2)MSW:medical social worker
(※3)TORCH:toxoplasmosis , other infections , rubella,cytomegalovirus and herpes simplex virus
(※4)DQ:developmental quotient = 発達指数
(※5)IQ:inteligence quotient = 知能指数

出典:厚生労働科学研究「周産期ネットワーク:フォローアップ研究」班 編
「ハイリスク児のフォローアップマニュアル」 メジカルビュー社 P2~4

(三科 潤 著)より 一部改変